【豪州選挙】否定された左翼的階級闘争路線 モリソン氏の演説から

「豪州に神のご加護を!」と述べ勝利演説を締めくくるモリソン氏
「豪州に神のご加護を!」と述べ勝利演説を締めくくるモリソン氏

5月18日に投開票が行われた豪州選挙について、報道によると与党・保守連合が77議席を確保する見通しとなり、単独過半数政権が成立する可能性が濃厚になりました。改選前は過半数を割り込んでした保守連合だったところ、これはモリソン氏による「圧勝」といっても過言ではありません。

 

引き続き、この選挙について分析していきたいと思います。18日深夜、モリソン氏は勝利演説において、以下のように述べて、演説を締めくくりました。

 

(我々の政策は)経済を強固にし、国民が必要とする必須のサービスを維持し、国民を安全・安心にするであろう。そして何よりも重要に、何よりも重要に、(我々の政策は)国民を共に束ねるであろう。我々は素晴らしい国民の素晴らしい国だ(We are an amazing country of amazing people)。豪州に神のご加護を!(God bless Australia!)

 

(この勝利演説は豪州政治史の中でも重要な演説のひとつと思われますところ、英語が分かる方はぜひご覧ください。)

まず「神のご加護を」ですが、モリソン氏は敬虔なキリスト教徒で、このことが反映されています。アメリカのトランプ大統領も度々演説において「米国に神のご加護を!」(God bless America!)で締めくくることが多いです。西欧においてキリスト教の存在感が低下している中、あえて「敬虔なキリスト教徒」であることを国民に示したことで、信仰心が深い国民の支持を得ることができたのかもしれません。

 

そして重要なことに「国民を共に束ねる」ことを強調しています。このことは今回の選挙の本質を示す部分でもあります。

 

このことと密接に関連して、モリソン氏は、財務大臣時代、2018年6月20日の議会における答弁で以下のことを述べています。

 

税制において我々と労働党との間に大きな違いがある。我々の税制は、他の国民をより多く課税することに依拠していない。我々の税制は国民のある集団を、他の国民の集団と対立させることはしない。我々の税制はすべての勤労者に恩恵が及ぶものだ。ある国民に対して増税して、ある国民を悪者にしようとするものではない。

 

保守連合は低所得者層から高所得者層までの広範な所得階層の減税を打ち出しましたが、労働党はそれを「金持ち減税」として強く批判しました。労働党は経済政策を「金持ち・対・貧乏人」という階級闘争として位置づけようとし、まさに今回の選挙に臨んだわけですが、それは国民に否定されました。

 

モリソン氏は、「すべての勤労者が報われるべき」として、国民の間に不毛な対立を煽ろうとする労働党とは、まったく違った方向性をを打ち出し、それが国民に支持されたといえます。そうであるからこそ、選挙の勝利演説において「国民を共に束ねる」ことの重要性を指摘して締めくくったと言えます。

 

今回の選挙では、前に書きましたように、イデオロギー的環境保護運動が否定されことも、もちろんですが、こうした国民の対立を煽る階級闘争運動も見事に否定されたものといえます。今回の豪州選挙において、イデオロギーや階級闘争に立脚する左翼運動が見事に否定されたことは、我が国を含む主要先進国の今後の政治的方向性を示唆するものと言えます。

 

アメリカにおいても、社会主義的な政策を掲げる急進的な左派が民主党内で支持を集めているようですが、果たしてそれが国民の広範な支持を得ることが可能かどうかについて、豪州の選挙結果をよくよく分析したほうがいいでしょう。

 

もっともそうした運動家たち(我が国におけるを含む)は、自己満足的に群れて騒ぐのが目的であって、国民の広範な支持を取り付けて政権を担うことに、そもそも関心がないのかもしれませんが……