【豪州選挙】人気投票ではない! なぜ労働党・左派が負けたのか分からない某経済紙

引き続き、豪州選挙です。報道によると現在の与党・保守連合の確定議席は75議席、予想によると78議席獲得予定で、仮にこうなれば過半数の76議席プラス2議席となり、比較的安定した政権運営が可能になります。このため、少なくとも下院では、無所属・諸派議員との妥協を強いられることもないでしょう(彼らの無力化)。

 

さて、今回の豪州選挙の背景として、豪州国民の多数が「イデオロギー的環境保護運動」「階級闘争路線」を否定したことはすでに指摘した通りです。

 

本日の「某経済紙」の社説において、豪州選挙についてものがあり、次のような指摘がなされています。

 

今回の選挙は、表面的には気候変動対策、財政、雇用政策などが焦点だった。だが政策の違いよりも、保守連合の顔としてのモリソン氏と、労働党を率いるショーテン党首の信頼感を問う人気投票の性格が強かった(日本○○新聞、社説、2019年5月21日)。

 

何という浅はかな分析……確かに、庶民的なモリソン氏と、如何にも労組貴族的なショーテン氏とでは、国民受けが違っていたのも事実です。しかし、単にそうした党首の「人気投票」であったとするのは、豪州政治を全く分かっていません。二人の党首の根本的な違いは、根本的な政策、裏打ちされた政治理念であったことは、すでにお伝えした通りです。

 

それは、減税といった経済活性化策によって社会全体を豊かにすることを促進するのか(モリソン氏)、金持ちと労働者の対立を煽り、誰かから富を奪う階級闘争を主眼とするのか(ショーテン氏)という政策上の明確な違いです。

 

この社説のような誤った指摘の原因として、①単にこの執筆者が素人なだけ、であればまだ許せるのですが、もし②イデオロギー的左翼路線が否定されたことを認めたくなく、論点をすり替えた、のであればかなり深刻です。

 

なお、今日雑談した知人によると、BBCニュースで、この社説と同じような主張があったとのことで、もしかすると、この社説の執筆者はそれを模倣しただけなのかもしれません。

 

いずれにせよ、豪州の左派や我が国を含む他の先進国の左派が(おそらくこの執筆者含む?)、この社説のように豪州選挙の的確な分析ができていないとなると、広範な国民の支持を得るためのスタートラインにも立てないでしょう。それはある意味、彼らのイデオロギー的な政策が実現されない可能性を上昇させるだけですので、どんどんオウンゴールを繰り返してください(笑)

 

ただ、この社説を読んだ読者が、豪州選挙の本質の理解から遠ざけられてしまうことは非常に残念であり、豪州研究者として、豪州の正しい姿、とりわけ賢明な選択をした賢明な国民の姿が、適格に理解されることが妨げられることは、怒りに近いものを覚えます。

 

豪州研究者として、微力ながら、豪州の本来の姿を発信していきたいと思います。