有意義だった礼文島でのセミナー「境界地域の交通と広域連携」

世界で稚内が一番大好きな大学教員、アーサーこと浅川晃広です! 稚内で移住希望者向けのシェアハウス「キックスタート!」を経営しています。

 

9月21日、境界地域研究ネットワークJAPAN(JIBSN)主催の、礼文島で開催されたセミナー「境界地域の交通と広域連携」に参加しました。これは、これに関わっておられる中京大学教授の古川浩司先生にご紹介いただいたためです。なお古川先生はキックスタートもご利用いただきました。

 

テーマの一つが「境界地域の交通」ということで、北海道標津町及び礼文町、沖縄県与那国町及び竹富町、長崎県五島市の各自治体の交通に関するプレゼンを聞きました。稚内を中心とする「きた北海道」については実際に居住をしてよく理解していたのですが、特に沖縄や長崎の離島自治体からの現状報告は非常に興味深いものでした。

すべてに共通する課題としては、①域内の公共交通(自家用車以外)の確保、②域外との交通の確保、といえます。特に②については離島の自治体については、飛行機と船舶になりますが、非常に課題が大きいといえます。より具体的には、天候のため欠航が多い、採算レベルに至るまでの利用者が少ないため、減便、中止となってしまう、ということです。

 

我がきた北海道には、稚内空港があり、千歳便と羽田便があるため、私も二地域居住が可能となっていますが、離島を含む辺境部において、いかに都市との交通網を維持するかが大きな課題と言えます。これは住民の生活もそうですし、観光などの経済にとってもそうです。

 

辺境地域への交通を採算ベースに乗せるのは難しいのですが、ではなくしてもいいのか、といってもそうではなく、かといって、赤字を行政が補填し続ければいいというわけではありません。何とか維持するための方策が必要です(それを考えようというのがこのセミナーの趣旨かとも思われます)。

また、興味深かったのが、与那国島と那覇の琉球エアーコミュータ(RAC)路線があり、この機材がQ400で74席なのですが、これを50席程度に減少させ、20席分の場所を荷物室とし、そこに特産の魚を空輸で運ぶというものです。単体での維持がコストが高いので、何でもそこに乗せていく、という考え方でしょうか。

 

あと、HAC(北海道エアシステム)による利尻・丘珠路線の説明もありましたが、国の補助金もあり、島民の料金が下がり、搭乗率・搭乗者が増え、黒字になったということです。豪州の内陸の地方都市でもそうですが、小規模ながらも空路の重要性が確認できます。

 

次に、これも同様に深刻な課題なのが、①域内の公共交通の維持です。やはりバスだと運行コストが高く、乗り合いタクシーやオンデマンド制への変更することで運行経費の削減を図っているということです。また標津町では唯一のタクシー会社の運転手が定年退職したため、タクシーが消滅する事態が発生したとの報告もありました。

となるとやはり住民間によるライドシェアを進展させていくことが、域内の交通・移動を維持のために非常に重要ではないでしょうか? これは許可を受けた事業者ではない個人が有償での輸送を請け負うということですが、これは現在の参入規制=タクシー業者の既得権維持のために規制されています。

 

先ほどの標津町の事例でもありましたが、そもそもタクシー業者がない、あったとしてもせいぜい一台程度しかない自治体もあります。こうした地域における規制緩和が既得権を侵害するわけでも何でもなく、サービスを受ける住民にとっても、サービスを提供する住民にとってもメリットがありますし、また、それによって行政コストが削減できれば、税金の支出も削減できるわけです。

 

なお、こうした規制によってタクシーの質が維持されているかというと、私の経験では全くそうではありません。名古屋でタクシーに乗ることがありますが、道を知らない、接客態度に問題のある運転士が多いように思われます。これもUBERのように運転士個人としての自由競争が成立していないからでしょう。

 

キックスタートでも旅館業法を著しく拡大解釈した不当な規制で悩まされたこともありましたが、特に地方において人口減少が進展する中、すでにある資源を分け合う、いわゆるシェアリングエコノミーが極めて重要になってきますが、それを阻害する不当な規制は一刻も早く撤廃されるべきです。

 

いずれにしましても、境界(北の礼文島)と境界(南の与那国島等)をくっつけた昨日のセミナーは非常に有意義でした!